2017年9月19日火曜日

【粳米】東北210号~だて正夢~【特徴・育成経過・系譜図・各種情報】

地方系統名
 『東北210号』
品種名
 『だて正夢』
育成年
 『平成29年(2017年) 宮城県古川農業試験場』
交配組合せ
 『げんきまる×東1126』
主要生産地
 『宮城県』
分類
 『粳米』(低アミロース米)


「だて正夢じゃ!宮城県に天下を!」



「おいしさの天下を取ってみせる」



~曇りなき 心の月を さきたてて 浮世の闇を 照らしてぞ行く~ 


宮城県の新品種、東北210号『だて正夢』の擬人化です。


どんな娘?

「天下取りじゃ!」
伊達政宗公の志を受け継いだ(と、周囲は言っている)娘。

大仰ともとられるふるまいと強気な口調で勇猛果敢、米戦国の時代に立ち向かいます。
大概の逆境も障害もものともしません(気にしない)。

だからこそなのか、どこか一点でつまずいてしまうととなし崩し的に自信が崩壊していく悪癖あり(逆境自体には強いが、失敗に弱い)。

先輩(ササニシキやひとめぼれ)より大食らいですが、先輩方基準で食事を出されることが多く、お腹を空かしてしまうことも多々あり…

ササニシキ、ひとめぼれと偉大な先輩へ羨望のまなざしを向け、いつか自分もあの頂へと…!



概要


アミロース含有率が概ね10%、かつ『ひとめぼれ』より優れる食味、「強い粘り」と「良食味」が特徴です。
甘くてもっちりとした食感。
平成30年度より本格デビュー。

東北・北陸各県でフラッグシップ米が打ち出される中、米どころ宮城県の最高級米を目指して邁進中。
品質保持のため、例にもれず生産者は登録制を採用しています。

宮城県の先代低アミロース品種『たきたて』『ゆきむすび』などは『農林8号』突然変異系統由来の低アミロース遺伝子「74wx2N1」を持っていますが、この遺伝子は登熟期間の高温に影響されてアミロース含量の低下、玄米の白濁、もち臭が強くなるなど品質の変動が激しいのが問題でした。
変わって『だて正夢』が持つ「Wx1-1」(北海道の『おぼろづき』由来)は、登熟期間の温度にアミロース含有率が左右されるのは同じですが、玄米の白濁度が弱く、炊飯米のもち臭が少ないという特徴を持ちます。


耐倒伏性は「やや強」で『ひとめぼれ』に優り、耐冷性も『ひとめぼれ』と同程度の「強(旧極強)」で、玄米品質も優るとされており、安定した食味・品質を確保できるものと期待されています。
ただし千粒重は非常に軽い(粒が小さい)上、追肥をしっかりとしないと粒が痩せ、さらに小粒になってしまうこともあり、施肥管理の徹底が求められる品種です。

いもち病抵抗性については、『だて正夢』の持つと推定される真性抵抗性遺伝子「Pib」を侵すレースが現状自然条件下で優占していない為、「不明」との判断が下されています。
今現在のところ、『だて正夢』の見た目の罹病率は非常に低いものになっているようです(ほ場抵抗性の強さはレースが変動しないとわからない)

近年注目される高温登熟耐性についても、玄米が白濁しているため判定が困難とされており、現状「不明」です。
鹿児島県農業開発総合センターでのほ場条件下では一応「強」との評価が下されています(参考値)。


当初の名称候補は伊達政宗にこだわって考案された『だて正夢』『だてじゃない』『お膳だて』の三つ。
この中から「みやぎ米ブランド化戦略会議」で『だて正夢』に決定となりました。

ロゴマークはアートディレクターの水口克夫氏が手掛け、五穀豊穣を表す米俵をモチーフとしたものとなっています。



育種経過

全国規模、特に東北・北陸の各県が米の良食味・高級ブランド化を進める中、宮城県の主力品種『ササニシキ』『ひとめぼれ』はそれぞれ育種完了から数十年の年月が経過していました。
これらの品種を補完し、”みやぎ米”の美味しさを発信できる良食味の新品種が望まれていました。

育種目標は【中生の良質】【多収】【極良食味】の品種。

平成18年(2006年)8月、宮城県古川農業試験場において『東北189号(げんきまる)』を母本、『東1126』を父本として人工交配しました。

父本となった『東1126』は北海道の『おぼろづき』由来の低アミロース遺伝子「Wx1-1」を有します。

同年10月、得られた種子33粒のうち21粒を播種し、F1世代を温室で集団養成。
翌平成19年(2007年)はF2~F3世代を沖縄県農業試験場八重山支所において世代促進栽培。

平成20年(2008年)にF4世代雑種集団を2,000個体を移植、個体選別が行われ43個体が残されます。
平成21年(2009年)F5世代は前年の43個体を43系統(各系統30個体)として移植し、この中から4系統が選抜されます。
平成22年(2010年)F6世代は前年の4系統を4系統群(各系統群3系統)、都合12系統として移植し、生産力予備検定試験に供試します。
ここで2系統まで絞られ、『10P-321』の試験番号を付されていた系統が後の『だて正夢』となります。

平成23年(2011年)にはF7世代に『東1424』の試験番号を付与、生産力検定試験、系統適応性検定試験並びに特性検定試験に供試。
前年の2系統を2系統群(各系統群3系統)とし、都合6系統の中から2系統を選抜。
前述の試験で有望と認められ、平成24年(2012年)から『東北210号』の系統名が付され、関係各県における地域適応性の検討に入ります。
この年も前年と同じくF8世代2系統を2系統群(各系統群3系統)、都合6系統として2系統を選抜。

F9~F11世代(平成25~平成27年)は選抜した2系統を2系統群(系統群5系統)、都合10系統として2系統を選抜、固定化を進めています。


平成28年(2016年)F12世代。
平成29年(2017年)1月、品種登録の出願を行い、同年4月に出願公表されました。



系譜図

『ササニシキ』『ひとめぼれ』と米界のサラブレットを生み出してきた宮城県が、北海道『ゆめぴりか』、山形県『つや姫』に負けんと米戦国時代に送り出した『だて正夢』。
当面は生産上限6,000ha、3万トンとして高級ブランド化を狙うとのこと。
行き先ははたしてどうなるか…

東北210号「だて正夢」系譜図


参考文献

〇水稲新品種「だて正夢」について:宮城県古川農業試験場研究報告
〇みやぎ米「だて正夢」公式ホームページ:https://datemasayume.pref.miyagi.jp/


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